ガラス微小電極にルシファーイエローなどの蛍光染色液を入れ、この電極をニューロン内に刺入することによって、単一ニューロンを染め出すことができます。染色されたニューロンについては、共焦点レーザ顕微鏡を用いることにより、焦点面を変えながら撮影ができ、その3次元構造を反映した連続画像(共焦点連続画像)が得られます。

 この画像からニューロンを抽出するには、背景とニューロンを分離する必要があります。目的とするニューロン領域と背景を2値(通常は明るさレベル255と0に分ける)に分離する処理は2値化処理と呼ばれ、FijiにおいてはImageメニューにあるAdjust→Threshold機能を用いることによって、分離する境界値(閾値)を設定し、実行することができます。また、画像ピクセルの明るさレベル値の分布から自動的に閾値を決定するアルゴリズムも提案されており、Fijiのプラグインとして公開されているものもあります。これらを導入,利用することによって,統計的に裏付けのある処理に基づいた2値化も可能となります。

 ニューロンのような複雑な3次元形態を正確に、かつ、効率よく抽出するためのソフトウェア開発も進められていますが、ノイズを含んだ2次元画像系列から3次元物体を抽出するのは簡単ではありません。我々が開発したフリーソフトSIGENは、ニューロンのある枝の端点から隣接するボクセル(3次元画像を構成する1画素)を辿って行きながら、樹状の形態を自動的にトレースしていくものです。ニューロンの樹状突起が切れていると判断する距離(Distance Threshold: DT)と樹状突起の一部であると判断するサイズ(Volume Threshold: VT)などを設定することで形態抽出処理を行うことができ、ニューロンの3次元形態を円筒形の物体(シリンダー)で繋いだ樹形モデルとして表現することができます。なお、SIGENの利用にあたっては、あらかじめmonoのインストールが必要です。

 このソフトウェアでは、ニューロンの3次元形態情報をSWC形式(http://research.mssm.edu/cnic/swc.html)で記述しています。SWC形式はニューロンの形態を表現するデータ形式として広く使用されている形式で、この形式のデータを使って、標準脳へのレジストレーションやNEURONなどのシミュレータを用いた応答シミュレーションなどを行うことができます。